すぐイライラしてまう自分、ちょっとしたことでカッとなる自分が、正直、嫌になる時ないか?
でもな、先に言うとくわ。怒るのは、普通や。カッとなって、その場で言い返したくなるのも、人間として、ごくごく当たり前のことや。おかしいことなんて、ひとつもない。
ただ、社会人になると、その当たり前が、なかなかさせてもらえん。言いたいことを飲み込んで、グッとこらえなあかん。ほんで、こらえた怒りを家まで持って帰って、夜にひとり、頭の中で蒸し返してまう。――しんどいのは、たいてい、ここからや。
そんな時、オカンが言うてた。「無理にコントロールせんでええ。怒ったら寝とき」。今日は、その一言の話をするで。
「怒ったら寝る」は逃げやない。“反射”で返さんための、時間稼ぎや
ここで、こう思った人もおるやろ。「ムカついてる時に、寝られるわけないやろ」って。ほんまにその通りや。
でもな、オカンの「怒ったら寝とき」は、「今すぐ眠って忘れろ」って意味やなかった。怒りを消す魔法でも、立派にコントロールする技でもない。ただ、反射で動いてしまわんように、“判断”できる余白が戻るまでの、時間稼ぎなんや。
カッとなってる時に出す言葉は、判断やのうて、ただの反射や。売られたケンカを買う。言われたから言い返す。それは自分で選んだ言葉やのうて、ただの反応で、たいてい後で後悔する。
家に帰っても、その反射は続く。「あの時、ああ言うたったら言い負かせたはずやのに」って、後から完璧な返し文句を思いついては、何回も蒸し返す。相手へのいら立ちと、こらえた自分へのいら立ちで、二重にしんどい。
せやから、いったん止める。寝られんでもええ。考えるのをやめて、その夜はもう店じまいや。ひと晩で切り替えられへん時もある。それでもええ。消えてしまうこともあるし、消えへんでも、繰り返すうちに、だんだん付き合える大きさになっていくからな。
寝るんは逃げやない。次の日また相手の顔を見たら、やっぱりイラっとすることもある。それは、消えへん。けどな、ひと晩で“余白”さえ戻ってたら、そのイラっを、反射でぶつけるんやのうて、判断として返せる。同じ一言でも、勢いで口から出てまうんと、いっぺん選んで言うんとでは、まるで違うんや。
【仕事で怒られてばかりで辞めたい夜に|オカンの言葉】
なんで、考えるほど腹が立ってくるんやろう
不思議なもんで、怒りって、放っといても勝手には消えてくれへん。むしろ、自分で考えてる間だけ、燃え続ける。
家でひとり、その場面を再生してるやろ。「あの時こう言うたれば」「いや、我慢して正解やった」「いやでも、舐められたままなんは悔しい」。言い返さんかった自分と、言い負かせたはずの自分が、頭の中で延々と言い合う。
これ、本人は「考えて整理してる」つもりや。けど、ほんまは、答えの出えへん問答を蒸し返してるだけ。考えるたび、悔しさも後悔も、最初よりでかなっていく。
冷静に考えてるつもりでも、怒ってる頭は、そもそも冷静やない。燃えてる頭で出した答えは、判断やのうて、蒸し返しの続きや。だから、考えても、余白は生まれへん。生まれるのは、ひと晩おいて、頭が冷めてからや。
ほな、なんでオカンが、それを知ってたんか。実は昔、自分が感情を抑えるどころか、そのままぶつけてた、中学生の頃にな――それを、教えてもろてた。
【頑張るなって言われたら不安? せやからこそオカンは“テキトー”を教えてくれたんや】
あの夜、オカンは怒鳴り返さんと、黙って寝た
中学生の時や。思春期ど真ん中で、毎日なんかイライラしてて、学校でも家でもモヤモヤが溜まってた。
その日も、オカンにちょっと小言を言われて、心の糸がプツンと切れてもうた。「うっさいねん!ほっとけや!」って、普段なら絶対言わんようなキツい言葉をぶつけてしもた。
オカンは炊飯器の前で、しゃもじ持ったままピタッと止まって、じっとこっちを見た。「あ、やばい…怒鳴り返される…」って身構えた。
でもな、オカンは怒鳴るでもなく、ため息ひとつついて、「もうええわ」とだけ言うて、自分の部屋に行って布団かぶって寝てしもた。
その背中を見て、なんとも言えん気持ちになった。怒り返されるより、静かに寝てしまうオカンの方が、なんか怖かった。ぶつけたイライラが一気にしぼんで、「ああ、やってもうたな…」って、後悔だけが残って、その夜はなかなか眠られへんかった。
翌朝、味噌汁の匂いと、オカンの一言
次の日の朝、台所から味噌汁と焼き魚のええ匂いがしてきた。
「まだ怒ってるんちゃうか…」ってビクビクしながら食卓についたら、オカンはなんもなかったみたいな顔で「ご飯できてるで」って言うた。
気まずくて下向いてご飯食べてたら、ふいにオカンがぽつりと言うた。
あの頃は、それがただの小言にしか聞こえへんかった。その意味が分かってきたんは、自分も大人になって、同じように怒りを持て余すようになってからや。
いらいらして、ええ。オカンが“寝て”教えてくれたこと
何回も言うけど、怒るのは普通や。その場で言い返したくなるのも普通。むしろ、それを社会人としてグッとこらえてるあんたは、それだけで、もう立派にやってる。
若い頃はな、言い返さへんのは、逃げや、負けやと思てた。かっこ悪いって。でも、ちゃうねん。こらえるんは、逃げやない。すぐ噛みつくより、いったん飲み込んで判断する方が、なんぼも難しいし、なんぼも強い。
でも、こらえたからって、気持ちはおさまらへん。帰りの車で一人「あほちゃうか!」って叫んだり、酒飲んでも晴れんと、「あの時ああ言い返したったら」って、いまだに思う。それでええ。むしゃくしゃが残っててもええ。こらえられただけで、上等や。その自分を、まず褒めたってほしい。
「いらっとせえへん自分」に、ならんでええ。
どうせ、なられへんのやから。
【逃げるのは悪くない!オカン流“逃げ道作り”で人生を楽にする方法】
ほんで、オカンの話や。オカンは、ただ受け流してたんやない。あの夜みたいに、子どもの八つ当たりを、いっぺん正面から受け止めた上で、その場では反応せんかった。受け流すんと、受け止めて反応せんのとは、まるで違う。
ただ、勘違いしたらあかん。オカンかて、聖人やなかったと思う。ほんまは言い返したい気持ちも、あったはずや。でも、怒ったまま出す言葉が大概まちがってることを知ってたし、何より、その間違った言葉を、息子にぶつけとうなかったんやと思う。だから、ぐっとこらえて、一晩寝た。
次の朝、ケロッと飯を作ってくれた、あの姿。腹の底のイライラが、消えてたわけやないかもしれん。ただ、一晩寝たことで、ちょっとだけ笑える“余白”が、戻ってただけかもしれん。それでも、その余白で、味噌汁を作ってくれた。
そう思たら、肩の力、抜けるやろ。いらいらしてええ。むかついてええ。無理に消さんでええ。
目指すんは、怒りをゼロにすることやない。作り笑いでも、仏頂面でもない。オカンが「寝て起きたら、どうでもよくなる」て言うてたんも、怒りが消えてなくなる、って意味やないと思う。ただ、昨日は頭の中ぜんぶ、その怒りに引っ張られてたのが、ひと晩寝たら、朝にはちょっとだけ、ゆるんでる。朝のコーヒーを一口「うまいな」と思える。くだらんテレビ見て、一回フッと笑える。それくらいの隙間――“余白”が戻ってきたら、もう十分なんや。
――どうや。それくらいなら、あんたにも、できる気ぃせえへんか?
「毎日ほんまによう頑張ってるな。しんどいときも、誰にも言わんと笑ってるあんたの姿、オカンはちゃんと見てるで。「頑張る」ことも大事やけど、「自分をいたわる」ことはもっと大事や。怒ったら寝てもええし、泣きたいときは思いっきり泣いたらええ。明日は、どうか自分の心に優しくしてあげてな。」
――オカンより
どうにもならんくらいしんどい時は、ひとりで抱え込まんと、専門の窓口を頼ることも大事な選択やで。
・厚生労働省 こころの耳:https://kokoro.mhlw.go.jp/
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